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山本恭司

ギター・プレイそのものに感情、命を宿す。そういう意識の演奏になって来ている

BOWWOWでのデビューから早34年。バンドにソロにセッションにと大きく活動範囲を広げてきた山本恭司。
彼にとってのジミヘンを語ってもらった

インタヴュー/文:大塚康一  写真:小嶋秀雄
協力:JVCケンウッド丸の内ショールーム

 1976年、BOWWOWでデビューした山本恭司さんは、当時からグローバルなテクニックと楽曲センスで、我が国のハード・ロック界をリードしていた。年齢を重ね、幾多のソロ活動などを経て深みを増したその音楽とギター・プレイの根底には、ジミ・ヘンドリックスの多大なる影響と深いリスペクトがあるという。

ジミ・ヘンドリックスとの出会いは?
山本 中学3年生の時の映画『ウッドストック』だね。それまで『ミュージック・ライフ』とかでは見ていたんだけれども、初めて音も動いている姿も観たのが、『ウッドストック』の映画だった。最初はまだギターを始めていない頃だったから、もう正直言って何やってるのか判らなくてね。本当にノイズを出してるだけに聴こえて。それで、その直後からギターを始めて、最初は嫌悪感しかなかったのが、段々引き込まれるというか。それで『ウッドストック』の3枚組のLPを手に入れ、半年ぐらい経った頃に改めて「アメリカ国歌」を聴いて、ホントに凄い衝撃を受けたんだよね。ギターの奏法というより、表現の凄さってことに、何かもう信じられないぐらいのショックを受けた。それから段々ジミ・ヘンドリックスというギタリストに興味を持ったわけ。実際に、高校1年の時に生まれて初めて人前でやった曲が、「パープル・へイズ」だったんだ(笑)。とにかく僕にとって……いや、世界中のギタリストにとって、ギターの持つ可能性を凄く拡げてくれた人。僕はCDもあまり持ってないし、ソロのコピーもあまりしてないんだけど、何より、ノイズだろうがフィードバックでもハウリングとか、あとはアンプが飛んだノイズまで、音楽に聴こえさせてしまう。そういうところがとてつもなく凄いと思うし、その後の僕のスタイルにも大きな影響を与えてくれたんだ。今、俳優の佐野史郎と二人で小泉八雲の朗読会をやったりしてるけど、「怪談」のバックとかでは結構怖い音も使う。フィードバックをさせたりとか、あとはアームでガーッとローを下げといて、裏の(アームの)バネを弾くとかね。あれは確か「マシン・ガン」の中で、そういうふうに聴こえるところがあった。

まさに効果音ですね。
山本 それこそフリー・ジャズっていうのは、聴く人がちゃんと理解して聴くともの凄い世界があるわけで、僕もジミヘンのも、もしかして普通の人にはノイズにしか聴こえないところにまで、美を感じるんだよね。だから自分でも、そういう普通のギター奏法の枠にとらわれない、はまらないギターの表現をして行きたいし、して来たつもり。
?ジミヘンの場合、サウンドそのものとリフの使い方が上手いですね。
山本 要は、想像つかないようなことをやるんだよね。例えば、「パープル・へイズ」だって、たかがペンタトニックの組み合わせなのに。初めて聴いた時は、ちょっとオリエンタルな、ブルースとかそういったものを越えた不思議な雰囲気に持って行ってくれた。僕がホントに好きになったのは『イン・ザ・ウエスト』というライヴ・アルバムからなんだけど、「リトル・ウィング」のリフとコードワークの美しさとか、それまで聴いたことのない世界があった。やはり違う次元でギターを感じ、考え、やっていたから。もしかしたら、あの頃では当たり前だったドラッグ・カルチャーとか、そういったものの影響も凄くあるかも知れないんだけどね。

具体的に影響を受けた曲は?
山本 「リトル・ウィング」とかああいった曲にみられる、コードを押えた中でのいろんな動きや、「ヴードゥー・チャイル」などにみられるような自由奔放に空を飛ぶようなソロ……実際、BOWWOWの1stアルバムの中で、ちゃんとジミヘンに捧げる曲を作っていて、そこで自分にとって最大限の賛辞というか感謝の気持ちを込め、かなり彼の気持ちを意識したプレイをしてる。あと同じくジミヘンの代名詞でもあるE#9を使ったものと言えば、僕のソロ・アルバムで『REQUIEM』の中の「Walrus」っていう曲があるんだけど、あれもたまたまパシフィカというストラトにちょっと似たタイプのギターでフロント(ピックアップ)で弾いていたら、ついそういう気持ちになったね(笑)。

ジミヘンだったら、これを聴いたら良いんじゃないというのは?
山本 『イン・ザ・ウエスト』の中の「レッドハウス」は、ジャズの世界にまで入り込んでるような3人のインプロビゼイションの応酬、全てが神懸かってる演奏だと思うね。歪んだ音もクリーントーンも素晴らしいし。いろんなものが凝縮されてると思う。あと忘れちゃいけないのは、『ウッドストック』でのプレイ。あれは絶対外せないね。

彼が今生きてたら、どんなことやってたでしょうね?
山本 さっきジミヘンは違う次元って言ったけど、僕らは今三次元で生きてるから、四次元の世界って想像できないじゃない? つまり常人の想像を超えたもの、それこそクラシックの世界からジャズまで、あらゆる音楽を制覇して、さらにそこから全く新しいものを生み出し、僕らを刺激し続けてくれてたんじゃないかな。

山本さんご自身、いろんなイベントをやられていますが?
山本 ここ10年とかは、ギター・プレイそのものに感情というか命を宿すというか、そういう意識の演奏になって来ている。若い頃は新しいテクニックや奏法に飛びついたりしていたし、今でも新しい表現は追求してるんだけども、ギターを弾くことで、そこに新しい命を生み出しているような、そんな気持ちになってるんだ。それこそ20代に比べれば、表現の幅は100倍ぐらいに広がっているね。今いろんなジャンルの人達と一緒にやってるんだけど、そこでまた新たな自分が引き出されるでしょう。そこが凄く楽しい。ホントにジミヘンが生きていて、チャンスがあったら絶対一緒にやってみたかったね。物凄いインスピレーションを与えてくれるだろうね。

最新ソロ・アルバム『THE LIFE ALBUM』は、人生がテーマですか?
山本 10数年前から、人の一生をテーマに作れないかというアイディアはあって、今回それが実現したんだ。1曲目の「DAYBREAK」で夜が明け、つまりこの世に生を受け、そしてラストの「HEAVENLY」で凄く穏やかな気持ちで、深い眠りにつくというようにね……例えば自分の父親は90歳なんだけれども、彼の現在のとても穏やかな心境をダブらせて「SUNSET HORIZON」という曲が出来てきたりとか。僕ももう54歳になったけれども、周りで亡くなって行く人も多かったり、改めてその一生、死を考えさせられる年齢になってるよね。だから今、自分にとっても、このアルバムを出しておくという……僕は100歳までは生きるつもりだけど(笑)、「音楽」で人の一生を描いた壮大な映画のような作品を作りたかった。だからいろんな人に聴いて頂ければ、自分の人生に重ねていろんなドラマが見えてくる、そういうアルバムになったと思うよ。

では今後は?
山本 この10年間いろんな活動をしてきて、傍から見れば結構ライヴをやってきたと思われるかも知れないけど、もっと何倍にも増やしたい。積極的にいろんなところ、いろんな形、機会があれば1人でも行く。もちろんバンドでもやり、いろんなセッションもやる。今度、津軽三味線とのセッションもやるし。僕に残された時間、人前でちゃんと演奏できる時間がどれぐらい残ってるか判らないけれども、それを有効に使って行こうと思います。

今、やりたいことをやってる?
山本 とことんやってる。『弾き語り、弾きまくり』といって、前半アコースティック、後半はそれこそソロをエレクトリックで弾きまくったり。だから僕はハード・ロック・ギタリストというイメージ、それはもちろん重要だけれども、ミュージシャンとして、その枠にとらわれようとは最初から全然思ってない。一生掛けて全ての音楽をやっておきたいし、かなりのところは制覇して来たつもり。それをより具体的にいろんな人に伝えて、音楽の自由さ、ギター表現の自由さ、素晴らしさを伝導して歩きたい。期待して下さい。

PROFILE&INFORMATION
山本恭司:1956年、島根県松江市出身。75年、斉藤光浩(g, vo)、佐野賢二(b)、新美俊宏(ds)とBOWWOWを結成し、76年、『吼えろ! BOWWOW』でデビュー。確かなテクと派手なステージングで熱狂的な支持を得、フェス出演やツアー等、海外進出も果たす。83年一旦BOWWOWとしての活動を停止し、翌84年、メンバー・チェンジの上名称をVOWWOWに変更して活動開始。90年の活動中止までにアルバム9枚を残した。98年よりオリジナル・メンバーによるBOWWOWでの活動を再開。現在はソロ活動とBOWWOWを並行して行なっており、2010年8月にはソロ・アルバム『THE LIFE TIME』とBOWWOWのDVD『BOWWOW SUPER LIVE 2009』を同時にリリースするなど、益々多彩で精力的な活動を続けている。

2010年11月13日(土) 東京・目黒Blues Alley Japan 鳴瀬喜博『続・宴暦ロック日和』・ 出演 : 山本恭司(g)、人見元基(vo)、厚見玲衣(Kb)、小森啓資(ds)、鳴瀬喜博(b)
2010年11月14日(日) いわき・Bar QUEEN『WILD FLAG LIVE』 ・出演 : 山本恭司(g, vo)、満園庄太郎(b)、満園英二(ds)
2010年11月20日(土) 長岡・音楽食堂『弾き語り・弾きまくりギター三昧』
2010年11月29日(月) 高知・キャラヴァンサライ『弾き語り・弾きまくりギター三昧』
2010年12月02日(木) 東京・La Donnna原宿『山本恭司(BOWWOW)ワンマン・ライヴ in La Donna原宿』 ゲスト:斉藤光浩(g & vo)
2010年12月25日(土) 東京・SHIBUYA-AX『"ヴァウの総て All about VOW " 第一幕〜渡英前』 出演:山本恭司(g. vo)、新美俊宏(ds)、厚見玲衣(kb)、人見元基(vo)、Gregg Lee(support/b)
2010年12月26日(日) 東京・SHIBUYA-AX『"ヴァウの総て All about VOW " 第二幕〜渡英後』 出演:山本恭司(g. vo)、新美俊宏(ds)、厚見玲衣(kb)、人見元基(vo)、Gregg Lee(support/b)
2011年01月15日(土) 東京・La Donnna原宿『山本恭司(BOWWOW) "大人のためのギタークリニック" in La Donna原宿』
2011年01月22日(土) 東京・THE CLUB SENSATION『Free Style Jam♯2: Kyoji Yamamoto』 サポート:michiaki(b)、富岡“Grico”義広(ds)

山本恭司Facebook
URL:http://www.facebook.com/kyoji.yamamoto

優れたシステムと相性が良いのは、やはり優れたソース

音づくりの最初から最後までご自身で手掛ける達人の耳で、ケンウッドK-521をチェック。 果たしてジミヘンの名演はどう再現されるのか?

インタヴュー/文:大塚康一  写真:小嶋秀雄

 CDに音楽は入っていない、音楽のデータが入っているだけだ……という著名な指揮者のレトリックは、今まで何度も引用させてもらった。それだけに、CD(やiPod)というパッケージから良い音を引き出すのは、至難の技だった。大仰なシステムならいざ知らず、非常にコンパクトでコストパフォーマンスに優れたオーディオ・コンポだったら、なおさらだ。
 しかしケンウッドのK-521は、先進のデジタル技術を使って、それをあたかも当然のようにやってのけた。
 改めて、ゲストの山本恭司さんに、そのK-521の音を聴いてもらった。ソースは、もちろんジミヘンである。

『イン・ザ・ウエスト』

 まず、1969〜70年頃のライヴを収録したアルバムから、名曲「リトル・ウィング」を聴く。昔聴いたアナログ盤や、他システムで再生したCDよりも、かなりさっぱりして整った音に聴こえる。
「これってリスニングポジションを選びますね。ジミが両方のチャンネルを行き来しているように、定位が変わる。確かに音楽で包まれる感じがとても良いけど、シビアな聴き方をする人には気になるかも知れないですね。ライヴだから、ミックスや位相の問題があるかも知れないけど」
 なるほど。音の広がりは素晴らしいのだが、リアリティという意味では、確かにそういった傾向はうかがえる。ライヴ盤ならではの録音だろうか?

『Hendrix In The West』
ジミ・ヘンドリックス
1972年
『アクシス:ボールド
・アズ・ラヴ』
ジミ・ヘンドリックス
1967年
『ウッドストック』
オリジナル・
サウンドトラック
2009年(リマスターCD)
『ウエスト・コースト・シアトル・ボーイ〜ジミ・ヘンドリックス・アンソロジー』
ジミ・ヘンドリックス
2010年
『THE LIFE ALBUM』
山本恭司
2010年

『ボールド・アズ・ラヴ』

 そこで、スタジオ盤を聴いてみる。1967年、サイケデリック真っ只中の作品だ。「空より高く」〜「スパニッシュ・キャッスル・マジック」〜「明日まで待って」を聴く。
「このサイズのスピーカーで、音の幅の広さというか、レンジの広さが伝わって来ますね」
 恭司さんが求めるピン・ポイントで定位する実体感とは別だが、K-521に搭載された最新技術、400ポイントの面で捉える音響パワー補正技術CONEQTMの威力が発揮された感じだ。

『ウッドストック』

 そこで、あの歴史的なアルバム。「アメリカ国歌」を聴く。
「音は凄く良いんですが、ライヴならではのパワー感では少し不満が残りますね。こういうある意味騒がしい、ぶっとい音のものだと、どうしても位相というか実体が気になっちゃって……だから僕は車でも何でも、DSP関係のものは全てオフってあるんですよ。CDとかのマスタリングも自分でやっちゃうんで、常にガチッという音で慣れてるせいがあるかも知れないけど。ライヴより、スタジオ盤の方が良い感じですね」

『ウエスト・コースト・シアトル・ボーイ』

 未発表音源を集めた4枚組アルバムから、ディスク3の12曲目「ファイア」を聴く。
「新たにミックスとかマスタリングされたものは、音も良いですねぇ(笑)。新しい音源だととても良い感じですね。ちゃんと、ギターの音の太さも出ましたね。バッチリです」
 やはり優れたシステムは、優れたソースとの相性が良いということだろうか。しかし、それはリスナーの好みの範囲でもあると、恭司さんは仰る。

『THE LIFE ALBUM』

 ならば、ご本人のアルバムを聴くしかない。ほぼ全曲を通して再生したが、その理由は録音と音が素晴らしいから。特に7曲目の「TALKING TO MYSELF」には、そこにいた全員がノックアウトされた。
「良い感じです。なんて言うか、普通だったらいかにもCDって感じがするんだけど、何かその辺で人が居て演奏しているという、そんな音が面で伝わってくるという感じが、不思議なぐらい出ていますね」
 マイクのセッティングから演奏、録音、マスタリングまで全て一人で行なったという才人が言う、本当の評価である。実際、音が生々しくハイ・スピードで、スピーカーに張り付いている感じが全くない。俗に言う“音ばなれが良い”というやつだ。
「CONEQには部屋そのものを音楽で満たす、そういう効果があると思いますが、それをオフにしたらどんな音になるかということにも興味がありますね。その切り換えが付いてたら、より良かったなと思うけどね。でも、この値段(実売価格)でこの音だったら凄いですね(笑)」
 DSPに依存しないピュアな音を求める、恭司さんらしいコメントだ。こうしたアーティストからの提案は、メーカーにとっても参考になるに違いない。  最後にお墨付きを頂いたところで、3マイク搭載の新しいレコーダー「Media Keg/MGR-E8」の音もチェックしてもらう。ソースは、この取材の会場でもある「JVCケンウッド丸の内ショールーム」のライヴ・イベントで実際に録音されたものだ。
「とても臨場感がありますね。イヤ、素晴らしい、感動しました。センター・マイクが決め手なんですね。これは優れものですね。欲しくなりました」
 オーディオ・メーカーの作ったレコーダーは、演奏とレコーディングの達人も魅了したのだった。
 音の入口から出口まで最良の音をハンドリングできることは、オーディオの真髄でもある。かつての音楽ソースはアナログ・レコードであり、テープであり、CDであった。それが今はiPodであり、ネットワーク経由のダウンロード・ファイルまで変革しつつ拡大されている。だが、常に基本は録音された音楽(とデータ)そのものにあることを、忘れてはいけないのだ。

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