
低価格・高品質で人気のケンウッドK-521でジョン・レノンのリマスター盤やサエキさん縁の音源を試聴。
自然な音、オール・デジタルの音、それぞれの相性は?
| インタヴュー/文:大塚康一 写真:佐藤哲郎 『THE DIG Special Edition ジョン・レノン』掲載 |
ケンウッドのK-521は、iPod用のデジタルドックを搭載し、そのデジタル出力を通じてピュアな音楽信号を取り出せる。そしてデジタルのまま増幅し、スピーカーから自然で、なおかつ豊かな音を再生可能だ。それは言うまでもなく、CDからも素晴らしい音を引き出せることを意味する。しかし最も重要なことは、そうした高度なデジタル技術が、数万円という非常にコンパクトなオーディオ・システムに凝縮されているということだ。そんな小さな巨人K-521の実力を、サエキけんぞう氏にチェックして頂いた。
ジョン・レノン『マインド・ゲームス』
いくつか有効な聴き比べをしていきましょうということで、まずは1973年に発表されたジョン・レノンのアルバムから。当初の邦題は『ヌートピア宣言』だ。7曲目の「インテューイション」を再生する。
「AORの先取りですね。マイケル・フランクスなんかがやってたシャッフルより、こちらの方が早いでしょ。とても進んでたような気がするな」
まったく古さを感じさせない、ジョンのヴォーカルと演奏が見事だ。
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| 『マインド・ゲームス (ヌートピア宣言)』 ジョン・レノン& ザ・プラスティック ・オノ・バンド EMI◎TOCP-70804 (1973年) |
『ピンクの心+2』 野宮真貴 ビクター◎VICL-70095 (2010年再発) |
『初音ミク sings ハルメンズ』 初音ミク ビクター◎VICL-63566 (2010年) |
『ダブル・ファンタジー (ストリップド・ダウン)』 ジョン・レノン& ヨーコ・オノ EMI◎70907 (2010年) |
『ジョンの魂』 プラスティック・ オノ・バンド EMI◎TOCP-70900 (1970年) |
野宮真貴『ピンクの心』
次はサエキさんともハルメンズなどでお付き合いの深い、野宮真貴のアルバムから「絵本の中のクリスマス」を聴く。洒脱なアレンジをバックに、透明感いっぱいの歌声が響き渡る。
「なるほど(こういう音かという感じ)」
初音ミク『初音ミク sings ハルメンズ』
「これがデジタル・サウンドです」といってサエキさんがかけたのが、ヴォーカロイドの初音ミクが歌う「電車でGO」だった。
「(CDの前に聴いた)iPodとの相性も非常によろしいようで、iPodをオーディオっぽく聴くことができましたね。それでCDですが、デジタルなものほど合ってますよね。低音のキック(バスドラ)の感じとか」
ご存知の方も多いと思うが、ヴォーカロイドとは擬人化されたコンピューター・ヴォーカリストである。つまりここで聴いたのは、すべてデスクトップで作られた(DTM)オール・デジタルのサウンドなのだ。それゆえ、ダイレクトにライン・レコーディングされた音源であり、アンサンブルの音の粒立ちと音質は最高で、ヴォーカルも人間らしく歌ってはいるが、完全無欠のマシンに近い。
「それだけに、ヴォーカルも含めてすべてデスクトップで作っている音楽を、耳当たりよく聴かせるというのは、大きな課題ですよね。やっぱり生音とは、手触りがずいぶん違うと思うんですよ(笑)。しかし(このK-521の音は)少なくとも、今までこのクラスのスピーカーで鳴らしてたのとずいぶん違いますよね。広がりがあるっていうか。それもサラウンドみたいにわざと拡げたんじゃなくて、普通に鳴ってるみたいな。そこが凄いと思いました」
ジョン・レノン&ヨーコ・オノ『ダブル・ファンタジー(ストリップド・ダウン)』
そこで再び、ジョンのリマスター盤を聴く。後付けのアンサンブルやエフェクトを取り去った、近頃流行のベーシックな音源のリマスターだ。1曲目の「スターティング・オーヴァー」を聴く。とてつもなく良い音!
「凄いですね。スクリッティ・ポリッティみたいな。ドラムスはもともとこんな感じなんですかね。コーラスが無いのが全然気にならないというか、要らないのがよく分かる(笑)。今だからこんなことができるという、驚きのチャレンジですね」
我々がかつて聴いていたのは、加工されまくった音だったのか……試しに、同じ曲を昔の盤で聴いてみた。
「ギターとドラムスのリヴァーブが、ヴォーカルを凄く喰ってた。当時はこれが流行していたんだけれども、今のデジタル・ミックスの技術を使うと、飛躍的にヴォーカルの作り方が良くなりますね。さっきのリマスターは、ジョンの本来のヴォーカルの魅力が120%表現されてた。それがプレゼンスが改善される技術の入った音(CONEQTM)で聴くと、いっそう際立つ感じ」
プラスティック・オノ・バンド『ジョンの魂』
最後に1970年のジョンのソロ・アルバムから、「ゴッド」を聴く。
「この曲だけ、ピアノがビリー・プレストンなんですね。“スターティング〜”と違ってまだエフェクターがない頃だから、リンゴ(・スター)のドラムの音も自然だし。だからこの曲には、ビートルズがまだ残っているんです。それなりに良かったけど、一番感動的だったのは、やはり“スターティング〜”のリマスターですね。自然な音のリマスターに最新のデジタル・オーディオという、今の旬同士の組み合わせが凄く良かったというのもありますね」
続いてケンウッドの新しいレコーダー、Media Keg / MGR-E8の音も聴いて頂いた。
「3マイクとは面白いこと考えましたね。それでこの価格だったら、安い!」
3マイクの利点は、センター・マイクがあることで、中抜けのない自然な定位と音場が再現できること。2マイクのレコーダーで録った音を凌駕する、まさにリマスターのごときオリジナルCDを作ることさえ夢ではないのだ。






