
新しい音源にも対応したケンウッドの次世代機で、片寄明人とポール・マッカートニーを聴く。
| インタヴュー:大塚康一 写真:小嶋秀雄 協力:JVCケンウッド 丸の内ショールーム |
デジタルを極めるには、アナログを熟知することから始まる。実例として、ケンウッド(JVCケンウッド)のアコースティック・サウンド・システム“Kseries”は、先鋭のデジタル技術と同社が長年培ってきたアナログ音質技術を結集したことで高い評価を得ているのだ。その最新モデルCD/USBレシーバーR-K731とスピーカーLS-K731を、アーティスト&プロデューサー片寄明人さんと共に聴いた。普段は英国製のオーディオ・システムを愛用する片寄さんに対し、国産の雄はどのようにアピールするのだろうか。
『ポール・マッカートニー』

まず最初に、『ポール・マッカートニー』を、「ラヴリー・リンダ」から順に聴いて行く。
「分離と定位感がしっかり感じられますね。家ではアナログで聴くことが多いのでちょっと印象が違うんですけど、結構楽しめますね。鮮やかな感じに聴こえますよ」
コンパクトなシステムなのに、実際に出てくる音のスケールに驚かれた様子だ。それはLS-K731が2ウェイでありながら、ウーファーにフルレンジ並みの再現力があることにも関係している。トゥイーターは、高域を伸ばすためのスーパートゥイーターとして働く仕組みだ。
「ウチで聴いてるのは、ずいぶん上(高域)が欠けてるんだなって気がしますね(笑)。もっとグッと真ん中に集まった音を、普段は聴いてるんで。特に上のきらびやかさ、華やかさっていうのを感じますね。細かな演奏をそれぞれ何をやってるかというのはこっちの方が聴き取りやすいし、ああ成程と、ミュージシャンとして何か燃えるものがありますね(笑)」
特にアコースティック・ギターの音が良く、さすがアコースティック・サウンド・システムというだけある。4曲目の「エヴリ・ナイト」を聴いたところで、片寄さんから「ミッド(中域)あたりをもう1dBぐらいプラスすると、どういう感じになるか聴いてみたいですね」というリクエストが。
「こちらの方がちょっと好みに近い気がするんですよね。さっきの方が高域のきらびやかさはありますが、こちらは音がギュッとつまった感じで、うねりも感じられる」
『バンド・オン・ザ・ラン』
続いて『バンド・オン・ザ・ラン』を、タイトル曲から順に試聴。
「充分楽しく聴けます。音楽の肝をつかんでいると思います。ちょっとだけ上がきつく感じられる時があるんですけれども、若い子にはいいかも知れません。中域を上げると、非常に良い感じです(笑)。聴き慣れた楽器の音で、特にアコギが良いですね」
『タッグ・オブ・ウォー』
同じくアルバム『タッグ・オブ・ウォー』より、「テイク・イット・アウェイ」と「エボニー&アイボリー」を聴く。
「デジタルってもっと冷たい感じに聴こえるかと思ってたんですけど、その感じがないですね。このアルバムは確かデジタル・ミックスなので、アナログで聴いていてもそれを感じるところはあったんですが、(このシステムでは)その感じがない」
デジタル臭さがないのがKseriesの特徴でもあるが、それは電源部にアナログ回路を使用していることも大いに関係あるだろう。アナログといえば、ケンウッドにはライン出力を備えた手軽なアナログ・プレーヤーがある。それをつないで、LPレコードの音を再生してみた。懐かしくもスムーズな音で、CDとは違ったアナログの良さが感じられるサウンドである。
「聴き慣れた音で、すっと音楽に入って行けますね。僕がプロデュースするバンドは結構60年代、70年代の音楽が好きな子達が多いんですが、みんな本物のレコードの音をスピーカーから聴く体験をしたことないんです。家に来てビートルズのモノ盤を聴かせたりすると、凄く感動するんですよね」
『RICHMONDO HIGH』

締めは、片寄さんがGREAT 3として1995年にリリースした『RICHMONDO HIGH』のリマスター盤。未だご本人も聴いていないということで、図らずも当日が初試聴となった。
1曲目から聴いて行くと、「自分のなので、頭を聴けば大体判りますね(笑)。良い感じですね」とのこと。最新録音ではないが、そのサウンドには非常にダイレクト感があって驚かされる。「Oh, Baby」では、「(アコギが)GibsonのJ-50だって、すぐ聴いて判る音ですね。ビートルズを参考にして作ったのが、よく判ります。素晴らしいと思います」
実は、R-K731は本体前面にiPod/iPhoneやUSBメモリーなどとのデジタル接続が可能なUSB端子、背面にパソコンとデジタル接続できるPC IN端子を備えている。そこでこの日は、USB端子にiPhoneを接続してハイレゾ音源(FLACプレーヤーというソフトで96kHz/24bitのソースをそのまま取り込み、再生時48kHz/16bitに変換)をUSBで、エイミー・ワインハウスのCDリッピングをPC INで聴いてみた。
「中域の充実感とベースの質感が凄い。ブーミーではなく、ナチュラルな低音感がある。音楽の醍醐味を、ちゃんと楽しめるシステムですね」
片寄さんは、初めて聴いたKseriesの音に好感触を持たれたようだ。
「デザインもシンプルで、ボタンの配置なども含めて良いなと思います。全く安っぽくないし。インテリアとしても好きなデザインですね。スピーカーのウッドの感じも安っぽくないし。とにかく、この値段でこれだけのものが聴けるというコストパフォーマンスにビックリです」
そして、こう付け加えたのである。
「今の若い人達に、ヘッドフォンだけじゃなくスピーカーで聴く楽しみがあることを、啓蒙したいと常々思っています」
それにKseriesが一役買うのは、どうやら間違いなさそうである。

『ポール・マッカートニー』
(スーパー・デラックス・エディション)
ポール・マッカートニー
ユニバーサル(UCCO-9987)
『バンド・オン・ザ・ラン』(紙ジャケ)
ポール・マッカートニー&ウイングス
ユニバーサル(UCCO-7879)
『タッグ・オブ・ウォー』
ポール・マッカートニー
現在廃盤
『RICHMONDO HIGH』
GREAT 3
EMIミュージック(TOCT-11309)

